ダニエル書 新旧の解釈

 『 モナリザの三つの橋 』で、私は「 それは現在・過去・未来を表している 」と述べ、旧約聖書ダニエルの一節、( 2'31 ~45 )に言及しました。本文とやや重複しますが、まず旧解釈からご紹介いたします。
 最後に原文をワク囲いで載せて置きますので、まず原文を読んで謎に挑戦してみるのも面白いかも知れません ………

 私はある牧師( 注1 )からこの箇所を、「 人類史の概観だ 」 と教わったのです。
  「 人類は金の文明、青銅の文明、そしてついに鉄と粘土 ( コンクリート ) の文明を築く 」
 人の作ったもの、つまり文明は、( もしそれを概観できると言うなら )陽炎のような幻想の一種なのでしょう。
 そう言えば我々は今、自ら作り上げた「 巨大な文明 」 の中にいて、その中に組み込まれているのですが、この文明はいつの間にどうやって出来て、我々は何故、その中で暮らしているのでしょう? 知らないうちに、そうしているのです。それも「 壊してしまいやすまいか 」とヤキモキしているうちに、やがて「 人手によらずに 」打ち砕かれる ………

 モナリザの微笑と同様、一瞬。その前と後には、果てしない荒涼とした虚無が拡がっている。それは無限の時間の中で、陽炎のように現れた、我々の幻想 ………  「 いつか 」 は、この国も、この星も、いや、大宇宙さえ、 「 最初から何もなかったように 」 、佇む事に成る ……… ( どうせまた、最初から何も知らずにやり直すのでしょうが、ね。)
 この事実を想うと、実に哀しい気持ちに成ります。しかしこれは 『 橋 』 。彼岸に行ける筈です。寂しいのと同時に、今のひと時が、親のように、子のように、また恋人のように愛しく大切に感じられ、慈しみの心が湧き上がります。この慈愛はレオナルドが繰り返し描こうとした表情で、たぶんその中に永遠、 『 ほんとうのさいわい 』 へと渡る、架け橋があるのでしょう。そう考えると、この旧解釈も捨てがたく成って来ます。


 次は新解釈をご紹介します。上の解釈は1970年代に聞いたものでしたが、新説によると ………

   エルサレムを支配した国は、
1 エジプト  BC1600-1400
2 アッシリア BC 721-607
3 バビロン  BC 606-536 ( ダニエルの活躍。金の国。)
4 ペルシャ  BC 536-330 ( バビロンよりやや劣る、第二の銀の国。)
5 ギリシャ  BC 330-146 ( 第三の青銅の国。全世界を治める。)
6 ローマ   BC146-AD1453 ( 東ローマ滅亡まで。西ローマは476年に、もろくも滅亡。鉄と粘土の分裂した国。ちなみに黙示録はAD90年頃、書かれた。)
7 トルコ ( セルジュク / オスマン )AD 1038-1922

 です。ダニエルが活躍したのがバビロン帝国のネブカドネザルの時代ですね。
 次のペルシャ帝国が、銀の時代。  ギリシャが青銅の時代、
 ローマが鉄と粘土の時代だと言うのですよ。
 素直に読めば、その通りと思われます。何と言っても前者の解釈は、黙示録時代の前後をすっ飛ばして、いきなり人類滅亡時の様子を描いているのですから、それまでのキリスト教的歴史観との整合性に難があります。
 それで、「 人手によらずに切り出され全地に満ちる石 」とは、初期福音書時代のクリスチャンの事だと言うのです。滅亡よりこっちの方がいいですね。( 笑 ) ちょっと安心しました。情報源は
聖書預言の驚くべき成就1:諸国の興亡(久保有政・解説)
 の、14'50"頃からです。しかし先日、間違って紹介した下のページも面白かったので、そのまま載せておきます。
『 久保有政牧師の聖書講義「終末論6」獣と大バビロン 』
 いや、『 黙示録 』は理解不可能な上にタブーでもありましたから、こんな本格的な講義がネットで聞けるとは、驚きました。


( 注1 )バプテスト派の牧師で、預言に関して未来の記述の部分に強い関心を持ち、アメリカから有名な牧師を招待して、信徒らに説教してもらうなどしておられました。という事は、キリスト教界では、かなりオーソドックスな解釈だったと思われます。
 1970年代中葉の話。中東で不穏な動き絶えず、ノストラダムス大流行の時代でしした。


 最後に原文を載せておきます。ネブカデネザル王はある日、不可解な、そして非常に強く心に残る夢を見、その夢の解き明かしをダニエルに頼みます。ダニエルは聞くまでもなく夢の内容さえ言い当て、立て板に水のごとくその説明をします。
 読み返すとやはり、新解釈の方がストレートですね。

2:31
 王よ、あなたは一つの大いなる像が、あなたの前に立っているのを見られました。その像は大きく、非常に光り輝いて、恐ろしい外観をもっていました。
2:32
 その像の頭は純金、
 胸と両腕とは銀、
 腹と、ももとは青銅、2:33
 すねは鉄、
 足の一部は鉄、一部は粘土です。
2:34
 あなたが見ておられたとき、一つの石が人手によらずに切り出されて、その像の鉄と粘土との足を撃ち、これを砕きました。
2:35
 こうして鉄と、粘土と、青銅と、銀と、金とはみな共に砕けて、夏の打ち場のもみがらのようになり、風に吹き払われて、あとかたもなくなりました。ところがその像を撃った石は、大きな山となって全地に満ちました。
2:36 これがその夢です。今わたしたちはその解き明かしを、王の前に申しあげましょう。
2:37
 王よ、あなたは諸王の王であって、天の神はあなたに国と力と勢いと栄えとを賜い、2:38 また人の子ら、野の獣、空の鳥はどこにいるものでも、皆これをあなたの手に与えて、ことごとく治めさせられました。あなたはあの金の頭です。
2:39
 あなたの後にあなたに劣る一つの国が起ります。
 また第三に青銅の国が起って、全世界を治めるようになります。
2:40
 第四の国は鉄のように強いでしょう。鉄はよくすべての物をこわし砕くからです。鉄がこれらをことごとく打ち砕くように、その国はこわし砕くでしょう。
2:41
 あなたはその足と足の指を見られましたが、その一部は陶器師の粘土、一部は鉄であったので、それは分裂した国をさします。しかしあなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、その国には鉄の強さがあるでしょう。
2:42
 その足の指の一部は鉄、一部は粘土であったように、その国は一部は強く、一部はもろいでしょう。
2:43
 あなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、それらは婚姻によって、互に混ざるでしょう。しかし鉄と粘土とは相混じらないように、かれとこれと相合することはありません。
2:44
 それらの王たちの世に、天の神は一つの国を立てられます。これはいつまでも滅びることがなく、その主権は他の民にわたされず、かえってこれらのもろもろの国を打ち破って滅ぼすでしょう。そしてこの国は立って永遠に至るのです。
2:45
 一つの石が人手によらずに山から切り出され、その石が鉄と、青銅と、粘土と、銀と、金とを打ち砕いたのを、あなたが見られたのはこの事です。大いなる神がこの後に起るべきことを、王に知らされたのです。その夢はまことであって、この解き明かしは確かです」。
2:46
 そこでネブカデネザル王はひれ伏して、ダニエルを拝し、供え物と薫香とを、彼にささげることを命じた。



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